一難去って、また一難…。前日に続いて、2日は新人の本条さん(15歳、非行)が脱走しました。脱走は、こうしてよく連鎖的に起こります。そんな気がなかった人まで、他の人がやると何となくやりたくなるから始末が悪い。ただ、本条さんの場合は「そんな気」充分だったようです(後に「入校当初から常に脱走がしたくて、どこから逃げるか考え続けていた」と反省文に書きました)。
それにしても、前日地平君を見て「5年後は私がコーチになって脱走生をたくさん捕まえる」などと言っていただけに、何と言うか、「情緒障害児の正体見たり」といった感じでした。彼ら、彼女らは、こうして平気で嘘もつけるのです。特に罪悪感など感じていないでしょう。
だから目が離せないのです。彼らにとって、大人の前で"いい子"の振りをすることなんてお茶の子さいさい。でも、人間の本質がそんなに簡単に変わるわけはありません。よく、入校相談の際、親御さんから「期間をもうちょっと短くできないか」と言われます。その時、「1年かからずに改善することもある。でも、1年はかけた方がいい」と私達は話します。それは、やっぱり人間の根本的な部分を変えるのに、1年もかけないで結果を得るなんて甘すぎると思うからです。
本条さんは夜中、スクール(2階奥の1人部屋)の窓から飛び降りて逃げました。その後、コーチ、生徒が手分けをして周囲を探しますが見つかりません。しかし、朝方になって彼女は母親に電話をかけました。これにより彼女の居場所が確定したため、母親ではなく、コーチが彼女を迎えに行きました。
彼女の逃走手段はヒッチハイク。2人の人をはしごし、1人は3千円と靴までくれたそうです。その人達はいい事をしたつもりでしょうが、まったく無責任。親御さんが娘さんの更生をどれほど真剣に考え、迷ったあげくに戸塚ヨットに託したのか知るよしもなく、簡単に1人の人間の"逃げ"を助けるのですから。もしかしたら、彼女の嘘に騙されたのかもしれませんが、それにしても身元も確かめずに車に乗せるとは。最近はタクシー着払いで脱走する生徒もおり、"親切(無責任)"過ぎる世の中にスクールは邪魔されっぱなしです。
それはさておき、コーチに迎えに来られた彼女は、さすがに前日までの「キャッキャッ」とした態度は消えて意気消沈。でも、後の反省文に彼女はこう書きました。「最初は騙されたと思ってショックだった。でも、スクールに帰って小杉コーチに『じゃあ、お母さんが悪いのか?』と問われ、よく考えた。考えてみると、母は私のためを思って戸塚ヨットに入れているんだ。親が認めてくれる良い子になるまで頑張ろう」。
文章はでき過ぎですが、確かにちょっと考えれば親の気持ちくらい理解できます。でも、問題は「頑張る」力があるかどうかです。残念ながら、今の彼女には文章では書けても「頑張る」力はありません。戸塚ヨットはその「頑張る」力をつけさせる所なんです。
|