スクールに新しい生徒が入りました。曽我君・22歳、症状は無気力です。曽我君は現役の大学院生。しかも慶応大卒です。輝かしい経歴を持つ彼が、なぜ戸塚ヨットに来たのか…。
そもそも、戸塚ヨットに入校したいと思ったのは彼本人です。ご両親はそんなこと、全く考えもしていませんでした。彼は今もご両親にとっては"いい子"なんです。何でも言うことをきいて頑張ってきた"いい子"。彼もそれがいいことだと信じてそうしてきたはずです。
それが、ここ3年位前から何か変なのです。急にウツ状態になって、何もしたくなくなったり。学校から出た課題を、「やるかやらないか」で何時間も考え続けたり。頭の中が「死」という言葉で一杯になることもあったと言います。最近では、とうとう家の中の物を壊すようになっていました。それでもご両親に危機感はありません。
「このままでは自分はダメになる」――曽我君は戸塚ヨット入校のため、ご両親を説得しました。ご両親も、「本人がそこまで言うのなら…」ということで入校を許可。初めて私達に相談をしてきた日から、3ヶ月経っての入校です。
曽我君のように、普通に社会に適応している、端からはそう見えても実はそうではない人達はたくさんいるのではないでしょうか。本当は、「自分はこのままではいけない、このままではダメだ」と忸怩たる思いを抱き続けて生活している人達。特に、「知」だけが発達している人達にこういう事が起こりやすいように感じます。やはり、人間の精神はバランスよく成長しないといけないんですね。
戸塚ヨットでは、このように自分から自分を変えたくて入校してくる人を歓迎しています。自分の"弱さ"に気づいている人達。彼らにはやっぱり、嫌々連れて来られた子供達よりやる気がありますから。ただ、そのやる気も長続きしない場合が多いのですが…。
これから先、きっと曽我君も途中で辞めたくなるはずです。自分が望んだこととはいえ、対人関係が苦手な彼が集団生活を送るのですから。もちろん、いじめだって起こるかもしれません。でも、戸塚ヨットは社会の縮図です。その小さな世界さえも凌げなければ、大海に出て凌げるはずもありません。逆に、あそこを凌げれば大きな自信になります。パッケージだけ美しい過去を捨てて、本当に生きている実感のある、中身のある未来をつかむため、曽我君の挑戦を応援したいです。
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