| 2003年11月2日(日) |
合宿所便り NO.62 「仁科君の意外性」 |
穏やかな秋の朝。風もなく、早朝の海は鏡のような水面に漁船が浮かび、岸には純白のサギが6羽、気高い姿で立っています。飛び立つと、海面にくっきりと美しい姿が映り、静けさを際立たせています。
午前7時、集合と共に、山本コーチの凛とした声が響き、まず挨拶の練習から。その後、筋トレ、ヨガ、掃除をして、午前8時15分頃朝食。ここでいつも一騒動が起きます。「何事?」と思われることでしょうが、別におかずの奪い合いではありません。単なる配膳の問題。
新人達は、ご飯茶碗と汁椀の位置、漬物やおかずの位置、お箸の置き方などについて、全く知らない人がほとんどなのです。そのつど説明するのですが、何度も何度も間違う人がいて、冗談なのか本気なのか分かりません。こうも間違われては、コーチ達も怒ってしまいます。
新人の仁科君(19歳、家庭内暴力)は、「はい。はい」と返事はしますが、質問を聞いていなかったり、分からなかったり…。なのに聞き返したり、教えてもらおうとしませんから、やることなすことがトンチンカンになっています。
「お味噌汁をこっちに」――「はい」
と言っておきながら、全く違う所に置く。
「おい、違うだろう」――「はい」
と、また違う所に…。
「分かってるのか?」――「はい」
「分かってないのか?」――「はい」…
この調子では、コーチ達の忍耐力も限界に来てしまいます。
こんなやりとりの後、やっと朝食になるわけです。食事中のマナーはだいぶ改善され、みんな行儀よく食事を取っています。
午前中は、セールとボードの修理。
ボード修理は、1階の慣れた生徒達の仕事です。作業着のつなぎを着てタオルをかぶり、ボードを削ったり、粘土状のパテを埋め込んだり。いかにも作業員らしく振舞うのが、楽しいようです。
ボードは非常に壊れやすいものです。固い物にぶつけると、すぐに傷ついたり、ひび割れたり、穴が開いたりします。使用頻度が高い上、乱暴に扱う人もいるため、常時、"要修理"のボードがあるのです。"職人"達は、仕事にあぶれることがありません。
一方、2階の生徒は全員でセール修理。セールもまた、破れやすく、何枚も"要修理"が溜まります。みんな少しずつ慣れてはきたので、縫い目は随分きれいになってきました。
午後は、広場でウインドの道具を片付けたり、セールやボード等のしまってあるコンテナや、移動用の車の掃除。ついでに、広場の隅の除草と、ゴミの片付けなどをしました。午後いっぱいかかり、広場はだいぶんさっぱり。
広場の隅は、ゴミが溜まりやすい所です。汚くしていると、釣りなどで遊びに来た人達が、余計にゴミを置いていきます。常にきれいにしておかないといけないのです。
作業の後、今日は特別にアイスクリームの差し入れがあり、みんなを喜ばせました。
夕食は、林料理長(32歳、元家庭内暴力)による「鶏の照り焼き」。一緒に作りながら、「あー、なるほど」「いや、結構簡単ですねえ。1週間に1度は、これいきましょうか?」
おしゃべりに夢中にならなければ、焦がすこともないんですけどねえ…。
夕食後は、久々に"遊び"の時間となりました。
新聞紙は、つい先日、ゴミの日に出してしまいました。そのため、近所のお豆腐屋さんと区長さんに頂いてきた新聞紙を使用。さっそく「尻歩き新聞紙叩きゲーム」の始まりです。
大暴れの1階の生徒達と田中コーチ、文平(高2、長男)、晋平(小6、次男)。それに比べ、壁際を離れられない2階の生徒達。それでも江口君(18歳、非行)や、入ったばかりの白岩さん(18歳、非行)は、ビックリしながらも楽しそうにしています。仁科君も、まるでテンポが違うものの、みんなにつられて楽しそうにしています。
それにしても、このすごい熱気と大声は、どこまで響いているのでしょう…。
早くも新聞紙はヨレヨレになり、ついにはボロボロになって、みんな汗びっしょり。白岩さんも、みんなの容赦ない攻撃に唖然としたり、笑い転げたりして、髪もボサボサになっています。
次の"遊び"は「目隠し鬼探し」。全員目隠しをして鬼を探し、鬼だけは目隠しなしというルールです。
最初は仁科君が鬼になりました。目隠ししたみんなの横をすり抜けたり、かわしたり…。その素早い、静かな動きと緊張感は、普段の彼からは想像もできません。コーチ達も呆れたり、笑ったり、いったいどういうことでしょう!?
本当は力も強いし、見ようによっては(?)堂々としている仁科君。これがきっかけとなって、本来のいいところが出てくれば、と思います。
その後、鬼になった林君も、ワクワクしながらみんなの周りをすり抜けます。中川君(18歳、元無気力)の背中を、何度もつついて逃げるという余裕まで見せながら。
さて、次の相原君(15歳、元無気力)が逃げ込んだのは棚の奥の方で、みんなが1度つかまえたのを振り切り、さらに奥の方に移動してしまいました。目隠ししたまま、「いない!」とポカンとするみんな。しかし、建物の構造に詳しい晋平と文平からは逃げられず、棚の奥から引きづり出されます。ついでにズボンも脱げそうになり、みんなにくすぐられるに至って、笑い転げながら「やめろ、バカ!」を連発する相原君。みんな、顔を真っ赤にしてお開きとなりました。後には新聞紙のクズが、大きな洗濯カゴいっぱい残りました。
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