2003年12月18日(木)    合宿所便り NO.70「矢作原人と矢作汁」

今日は一段と寒気が強まり、風も昨夜から吹き出していて、朝から移動の準備となりました。曇り空の下で、広場へ向かう堤防から見る海は灰色。時々、風が黒っぽい跡を残して吹きつけています。見渡せば、矢作(やはぎ)川近くにある煙突の煙も真横に流れ、向こうにも風が吹いていることが分かります。

広場ではコンテナを開いて、各々のボード、セール、マスト、ブームなどを出し、トレーラーに積み込みます。風に合わせて小さめのセールを選び、ボードをラックに乗せ…というのがいつもやっている作業。でも、つい横着をして、楽な所に道具を入れてしまい、後になってやり直す。こんなことがしょっちゅうあって、時間ばかりかかります。

相原君が卒業してから、中心になって動ける生徒がいなくなり、みんな、自分のことで精一杯。全体の流れを見たり、他の人の手助けをすることができず、"烏合の衆"という状態です。
動きはさらに遅くなり、すぐにおしゃべりを始める人もいて、朝の積み込み作業はなかなか進みません。「さっさと終わらせて、寒い広場から引き上げればいいのに」と思いながら、あれこれ注意することになってしまいます。

積み込みが終わると、ドライスーツ、タオルなど、各自の荷物を用意。それから掃除、朝食、後片付け、昼食の準備と、慌しく時間は過ぎます。午前9時半頃、車で矢作川に出発しました。

素足の『矢作原人』走る

矢作川の川原に立つと、茶色く枯れた草が風になびき、川面は小さな白波が立ち、冷たい北西の風が顔に当たります。
今日はみんな、小さめのセール(4.0uから6.0uくらい)を張って練習です。強風の中、ボードやセールを川原まで運ぶのにも慣れました。みんな、着実に進歩しています。

川辺の砂浜でボードにセールをセットして持ち上げ、いざ川に入ると、冬用のブーツを履いていてもやはり水は冷たい。グローブを着けていても手はびしょぬれだし、少し深い所まで行くと、水しぶきが顔にも当たります。
それでも、走り出してプレーニングすると楽しくなり、あっという間に向こう岸近くまで行ってしまいます。が、(私の場合)ほとんどいつもそこでジャイブ(方向転換)に失敗し、頭のてっぺんまで水につかり、塩辛い水(ここは、河口で海に近いため)をしこたま飲みます。そして、ゴボゴボと咳き込み、しばらく水の中を泳ぎながら、ウォータースタートの準備。

ウォータースタートのフォームをとると、頭の上にセールがきて、水がバシャバシャ降りかかってきます。それでも風を見定め、ボードに乗った直後に飛ばされたりしないよう、「えいっ」と風に体を持ち上げてもらいます。でも、少し疲れてくると、ボードに乗った途端に突然の風にバランスを崩し、いきなり前に倒されることもしばしば。水に使ってまた1からやり直し、というのを繰り返すハメになります。

私がそうやってもがいている間、山口コーチは川を縦横に突っ走り、華麗にジャイブを繰り返しています。(クソーッ)
真木君はよくプレーニングするようになり、6.0uのセールで、ひとり抜きん出ています。
秋吉さんもブローの中でよく走り、派手に落っこちています。それでもめげずに水中から復活するパワーを持ち、時々プレーニングするようになりました。
仁科君もかなりのスピードで突っ走っています。体も大きく、力もあるので、もっと大きなセールでガンガン走れるようになるのではないでしょうか。しかし、本人は「危ないから」と、いつも控えめに小さいセールを張っているのは、元暴走族らしからぬ振る舞いです。
一方、林老人(失礼)は、いつもながら遅くもなく、さりとて速くもないという独自のスタイルで走っています。プレーニングまで後一歩なのですが…。

今日も風は吹いたりやんだり。強風と微風が交互にやって来るので、慣れないとすぐにハエタタキ(セールの下敷き)になったり、セールの上に倒れたり…。ほとんど寒中水泳のようなありさまです。
しかし、矢作川には、風さえ吹けば気温も水温もお構いなしのセイラー達がやって来て、抜きつ抜かれつのヒートが繰り返されています。フリースタイルのセイラーは、跳んだりはねたり、派手に落水したりしていて、あちらもやはり寒中水泳かのよう。さらに、ブーツも履かず、素足で乗っている『矢作原人』(すみません、私が勝手につけた名前です…)という人達もいます。

午後2時半過ぎぐらいになると、川下に向かう方角は逆光になってきます。水面が輝き、きれいではありますが、よく見えなくなるので注意が必要です。
そして次第に日は傾き、空も暗くなり、さらに寒さが増してくると、終了の時間となります。
手は冷たくかじかんで、艤装を解くのも一苦労。みんな、服に着替えてから、改めて道具を片付け、積み込み完了。この時間が、一日のうちで1番寒いのではないでしょうか。
やれやれと車に乗り込むと、暖かくてホッとします。

命名『矢作汁』

合宿所に帰り、シャワーを浴びると、林君と真木君は買い物に。その後は、林料理長による新メニュー、「春雨入り五目野菜炒め」作りが始まります。まだ、調理場に慣れない真木君に、先輩風を吹かせ、時々お説教口調になる林君。さあ、おしゃべりより、まず行動!

てんやわんやの末、やっと夕食が出来あがり、みんなで「いただきます」。すると、真木君の味付けしたお吸い物を口に含んだ山本コーチが、「なんや、これ、今日の矢作の水みたいに塩っ辛いなあ」と苦い顔。他のみんなも、「わっ、辛い!」。仕方なく、お湯で割って頂くことになりました。

かくして、真木君の初めてのお吸い物は、"矢作汁"と命名されました。あの川の水を飲んだことのない方にはお分かり頂けないのが残念…。
ところでこの"矢作汁"、仁科君にとっては「味が薄い」そうで、一同、唖然としてしまいました。


※文中の生徒名は全て仮名です。

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