2003年6月11日(水)    合宿所便り―その12―

今朝はあいにくの雨。風もなく、とうとう梅雨入りです。
午前中は久しぶりに武道の稽古。山本コーチの凛とした声が響く中、2人1組になって練習します。直接相手と触れ合うことになるので、始めは少々戸惑う生徒達。一見すると、一方が相手を倒す技の練習のようですが、本当の意味はまったく別のところにあります。

山本コーチ、「本当に力を入れてはダメだ。相手が前に倒れるんやから、ケガせんように気をつけろ。そうやって、相手を気遣うんや」
「やられる方も、力が強過ぎたり、痛かったりしたら、ちゃんと相手に伝えるんや」
ところが、まったく加減の分からない生徒達。単に力なく格好だけつけようとする人、または、チンピラのけんかのようになってしまう人…。
「これは相手との関係や」
体を使ったデリケートなコミュニケーション。自分のことしか考えてこなかった生徒にとっては、特に難しいことです。たぶん、ほとんどの生徒には、何が難しいのかということも、何をやっているのかも理解できなかったでしょう。

稽古が進むにつれ、ますます自分勝手な動きをするようになってしまう。コーチのお手本をきちんと観察することができない。大事な事を言っているのに、解ろうとしない。やる気のなさも手伝って、一人ひとりの欠点が露呈することとなりました。
「人の言うことを、ちゃんと一つ一つ実行しろ。相手を、周りを気遣うんや。それは武道も掃除も一緒や」
山本コーチの真剣さとは対照的に、覇気のない生徒達。まるで、このどんよりとした梅雨空のようであり、正直言って、少々落胆させられました。進歩するためのたくさんのチャンスを前にして、それと気づくことさえなく見過ごしている…。


午後は一転して青空が見え始め、風も吹き出し、落ち込んだ気分も高揚してきます。さっそく海上へ。やはり海の風は気持ちがいい。相原君(15歳、元無気力)、野島君(22歳、元無気力)、地平君(24歳、元無気力)は、すぐに沖の方へ吹っ飛んで行ってしまい、目を凝らして探さないとセールが見えません。まだあまり走れない生徒達は、レスキュー艇で沖に出ます。

私がウインドを始めた頃、まだボードの上に立つのもやっとという有り様で、いきなりレスキューから沖の海上に降ろされた時の心細さは、名状しがたいものがありました。海の上で独りぼっちになってしまうのですから。

レスキューから降り(というより、落ちるの方が正解ですが)、そこからボードに這い上がり、遠ざかるレスキューを恨めしげに見送りながら、仕方がないと覚悟を決める。そして、やたらグラグラするボードに立ち上がり、アップホールライン(セールについたロープ)を引いて、セールを持ち上げる。と、あっという間にバランスが崩れ、一瞬のうちにまた海中に没する…。

いきなりセールの下敷きになる、という不運に見舞われることもしばしばです。その度に水を飲み、必死でもがき、ボードをつかまえてやれやれと思うのです。人によりますが、まぁ、1週間ぐらいはこの調子ですから、はっきり言って全く楽しくありません。
ライフジャケットを着用しているので、溺れることはありません。が、そうとは分かっていても、焦ってしまうものです。おまけに、いつの間にか手足はアザだらけ…。

しかし、こんな調子ではあっても、その間、ほんの一瞬でもボードの上でブームを掴み、海上を走る(動く?)ことができると、その爽快さに、それまでの苦難も多少は忘れ去られるのでした。この段階を過ぎるとどんどん楽しくなりますので、多くの方にウインドを楽しんで頂きたいものです(ちなみに、ヨットスクールでは「セーリングクラブ」として一般の方の参加も歓迎致します(^-^) )。

夕食後、1階では勉強が始まりました。相原君も、周囲の熱心さに押され、一緒に勉強することに…。この習慣を長続きさせたいものです。


※文中の生徒名は全て仮名です。

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