| 2004年1月9日(金) |
合宿所便り NO.79「腕時計」 |
7ヶ月ぶりに帰って来た浦崎合宿所は、見るからに人気のない淋しい様子。
玄関を開けると埃の臭いが鼻を突き、子供の頃、大人の目を盗んで空き家に入って遊んだ思い出が、懐かしくよみがえりました。しかし、感傷に浸る間もなく、大掃除スタートです。
長い間使用していない道具類のトラブルが続きます。掃除機から始まり、炊飯器、草刈機、チェーンソー、おまけに自動車…と、次々に動かなくなりました。
ここで、道具類のメンテナンス係に任命されたのが江口君(18歳、元非行)です。彼は子供の頃から機械類が好きで、農作業など、体を使う仕事の経験も多々あるそうです。彼を含めて3人いる九州勢は、酪農、農作業の経験が豊富です。私より道具類の扱いには慣れているはずですが、端で見ているとやっぱりヤキモキしました(笑)。自分から率先して仕事をするのはいいですが、集中力が途切れてしまうのか、大きなミスを何度か繰り返すのです。ただ、全般に作業は細かく、丁寧なため、「腕時計」の使用許可が下りました。
スクールの色々な作業を一所懸命にする生徒に必要となるのが、「腕時計」です。スクールの1日のスケジュールは、朝の体操から始まり、掃除、朝食作り、移動準備、昼食準備etcと、なかなか多忙です。それらを平行して、限られた時間内で全て消化しなくてはなりません。これは本人たち自身に、工夫する必然性を作るためです。
自分のペースではない共同生活のペース。社会人となって働き出したら、自分の御都合で遅刻なんてできません。そこに繋がるように、作業は時間内に全て終了させます。
合理的な段取りを身につけ、フットワークも一段と軽くなった生徒達。ここ沖縄に来て、「腕時計」の許可が下りた生徒は3名もいます。
「白岩(18歳、女、元非行)来い!」と、食料買い出し時に呼びかけたのは小杉コーチ。「はいっ!」と素直に
返答し、閉店間際のお店に弾む駆け足で向かう彼女もその1人。安物で、ちっぽけで、高性能でもない、何の変哲もない腕時計。ですが彼女にしてみれば、嬉しくて仕方がありません。
物が溢れ、あらゆる物が自由に手に入る現在。何不自由なく物を与えられる人達が得られるありがたみより、彼女にとっては遥かに価値ある大事な宝物。働き者の彼女は、1時間毎の"お知らせメロディ"が鳴る度に、頬を赤らめています。
彼女達はとてもよく働きます。実に活発、居丈高、意気盛ん。男子生徒達との大きな違いです。例えば、物を運ぶよう命じた時、彼女達は最大限の力で、持てるだけ持ちます。が、男子生徒達はせいぜい1個、あるいは、彼女達がやっているので「自分の仕事ではない」と決め込み、石になって動きません。
移動の際、車の荷台に荷物を積み、ロープワークを行うにしても、われ先と三脚に飛び乗るのは女子達。男子達「……」。シーンとした静粛。同性として恥ずかしく思います。
「あほ!お前らー!男やろ。女の子にやらせて何も感じへんのかー!」
と声が出てしまう次第です。
――沖縄の街並は、本土のありふれた都会と同じ、温暖な気候を除いてはインパクトもなく、がっかり。でも、北部(山原)へ向かうにつれ、「那覇は沖縄では都会だったんだ」と気がつく。そして自然が姿を現した時、その光景に一瞬、声を失う…。
沖に向かう程、蒼の色彩は濃くなり、岸に近づく程、色は水色。日差しが容赦なく海面を照らし、反射して散され輝く。それらを統合すれば、宝石のサファイアのような綺麗な海。
その景色に吸い込まれそうになり、目を離せない自分の目までサファイアに染まりそうなひととき、大自然に驚愕させられてしまった!――
というのが、去年、初めてここを訪れた時の、私の印象でした。今年はこの綺麗な光景に負けないよう、ウインドのことだけで言えば、訓練生達の見本になるようにすることが、私の目標です。
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