第二十八回 東京セミナー
〜精神症状は肉体症状を伴って現れる〜
[登校拒否を直せない文部省が決める『マル適マーク』]
――今日は、花粉症と登校拒否についてお話して頂きます。
また、1週間ほど前に、文部省が「登校拒否児童を私学に通わせても出席扱いにする」というようなことを発表し、話題になりました。今まで、文部省が登校拒否児童に対してどのような対応をしてきたか、ということも含めてお話をして頂きましょう。
まず、文部省の方ですが、2〜3週間ほど前、「文化放送」の取材を受け、この問題についてどう思うかを話してきました。
この施策は、「どんな施設に行っても出席と認める」わけではありません。文部省が「ここならいい」と認めた所でなければダメです。いわゆる「マル適マーク」を文部省が決めるんです。
しかし、よく考えてみると、これは矛盾ではないでしょうか。文部省が「ここは良い、あそこは悪い」と分かるなら、どうすれば登校拒否を直せるのかを知っているということになります。ところが、それを知らないから、いつまでたっても登校拒否は増え続けるわけです。その文部省が「マル適マーク」を決めるなんて生意気だ、とラジオでは話してきました。
この取材のあと、新聞やテレビで「マル適マーク」が与えられる条件というのを見たんです。すると、その中の1つに「体罰等を指導方針としないこと」というのがある(笑)。明らかにうち(戸塚ヨットスクール)をターゲットとして作ったような文言です。
さて、こういうことを役人が決めること自体が、教育問題を引き起こす原因です。その基本的な線をそのまま残しておいて、つじつまだけ合わせてもダメではないでしょうか。もし、「マル適マーク」を決めるなら、実際にどの方法が有効なのか、文部省がきちんと確かめなければいけません。
「あそこでは○○タイプの登校拒否は直った。××タイプの登校拒否は直らなかった。しかし、全体の4割は直ったから『マル適マーク』である」とか、「あそこは100人のうちの1人しか直せなかったから『マル適マーク』はやれない」とか、そういう決め方がいいと思います。
[手段だけではなく、目的を見よ]
文部省が「マル適マーク」を決めるにあたり、もう1つ問題になるのが、「暴力はいけない」などという“手段”に言及すること。これは、あまりにも出過ぎたまね、という気がします。手段の先にある目的を見るべきで、手段だけで善悪の判断をするべきではありません。
例えば、手段によって「良い、悪い」を決めるなら、外科は成り立たないでしょう。外科手術というのは非常に残酷です。ところが、それをしなければもっと残酷なことになるから許される。物事はそういう視点で見なければいけないと思います。
以前、ヨットスクール問題が起きていた頃、「うちでは直る」ということの証明に、改めて統計をとり直してみました。すると8割方直っていることが分かったんです。ところが、「学校に行ったからといって、そういう子供達がよくなったわけではない」などという問題が出る。
このような言い方は、逆に「学校に行きさえすればいい」ということの裏返しに見えます。「登校拒否の児童がよその施設に行っても出席扱いにする」ということは、出席日数にこだわっているわけです。そこに対して疑問を持ちます。
いずれにしろ、あまりにもそういう問題児が増え、もう文部省では成すすべがないことを認めた、ということだと思いますから、ある意味一歩前進ではあるでしょう。ただ、この先どんどん進んでいくとは思えない。日本の場合、役人というと、優秀な人もいるでしょうが、むしろ邪魔をしている人の方が多いように思うからです。
[病気が治ると困る団体(1)]
先日、エイズ患者をうちで直してみたくて、ある厚生省に顔のきく人の所に話に行ってきました。すると、その人は「そんなことがもしできたとしても、厚生省では絶対に取り上げてくれない。相手にもしてくれない」とはっきり言いました。
確かにそうでしょう。エイズを直す直さないの問題ではないんです。厚生省の顔を立てるということが問題です。これは厚生省だけにある体質ではありません。
もう3年ほど前でしょうか、ある落語家のパーキンソン氏病を直して欲しいと頼まれ、やってみました。すると、パーキンソン氏病そのものは、もう手遅れで直りませんでしたが、体が動くようになり、舞台に上がれるようになったんです。
良くなり始めた頃は、我々のところで直ったと紹介されていましたが、舞台に上がれるようになるとうちのことは黙殺され、「仲間が治した、奥さんと子供の愛が治した、虎ノ門病院の○○先生のおかげだ」と変わっていきました。その落語家自身も、我々に対する態度を変えてしまいました。これ以上うちと付き合っていたら、本人のプラスにならないと思ったのでしょう。
しかし、最初の頃の報道を見た「重症筋無力症」の人から、自分の病気は何とかならないかと電話がかかってきたんです。
[病気が治ると困る団体(2)]
「重症筋無力症」というのは免疫異常です。それも自己免疫で、専門家は「治らない病気。進行する一方で、良くて停滞」と言います。現実にそうなんです。
しかし、専門家の行う治療は、免疫そのものには触らず、進行だけを何とか食い止めようとしています。この方法では治るはずもありません。免疫の問題なんですから、免疫そのものを正常にすることが根本療法です。彼らはその方法が全く分からないため、ひたすら進行を食い止めることに懸命になっているんです。
しかし、我々が考えるに、どうも直る可能性はある。ただ、どの程度の症状まで直せるかはよく分かりません。
「とにかく1度やってみましょう」ということで、その電話の相手にトレーニングをしてあげることにしました。ただ、今までさんざん裏切られています。今回は後で意地悪をされないよう、「重症筋無力症友の会」というところに連絡をし、「うちの理論によれば、重症筋無力症に対して必ず良い結果が出ると思う。問い合せがあったのでやってみます」と仁義を切っておきました。
ところがそれが大失敗で、その会からその人に圧力がかかってしまったんです。その圧力のかけ方というのが非常に陰湿でした。
「重症筋無力症」というのは、最終的には動けなくなるわけですから、入院しっぱなしで死んでいきます。そこで、最後のベッドの割り当てというのがあり、それを「重症筋無力症友の会」が握っているんです。つまり、「友の会」に逆らうとペットを割り当ててもらえないわけです。
さらに調べてみると、結局共産党なんです。だから難病の友の会の1つになっている。
難病だからその会は成立します。難病が治ったら会は成立しない。だから難病は治ってはいけない。つまり、会そのものの存続が問題で、患者の問題じゃないんです。
それと全く同じことが、厚生省の体質にもあるし、登校拒否やそれ以外のことに対しても起こっているようです。
そういうわけで、今回の文部省の発案はある程度の前進ではありますが、これをきっかけにして行政側の大改革が起きるなどということは決してないでしょう。
[まず直ったのは「アトピー性皮膚炎」]
次に「登校拒否」と「花粉症」とについてお話します。
『敵は脳幹にあり』(書籍)の中にも「花粉症」の写真が出ていますね。「花粉症」は直らないものではありません。簡単に直ります。その本に出ている例は2週間のトレーニングで直りました。
ここで必要なのは、「花粉症」の原因を考え直すことです。根本療法があるなら、それをそのまま予防に使えるはずです。
「花粉症」について、我々は、最初はあまり扱うつもりがありませんでした。
1番最初にこういう心身症、あるいは現代病がうち(戸塚ヨット)のトレーニングで直るということが分かったのは、「アトピー性皮膚炎」です。
当時は、親が子供をうちに連れてくると、まず5日間トレーニングし、5日で直らなければ1週間、という状態で合宿をしていました。そこに「アトピー性皮膚炎」の子供が数人来ていたんです。
我々としては、「アトピー性皮膚炎」そのものは気にしておらず、もっと精神的な、社会性がないとか登校拒否とかいった問題だけを重要視してトレーニングを行いました。
ところが、子供を帰した後、「おかげで登校拒否が直りました」ということのついでに、「アトピー性皮膚炎も直りました」という報告が何回かきたんです。それも、中学から高校までずっと続いていたというような、症状のひどい子供です。
しかし、我々としてはまだ、「ああそうですか」という程度で、特に気にもしていませんでした。
[続々と現れる血液の異常]
その内に、他にも色々な、いわゆる病気が直るという例が出始めたんです。そこで、このことについて、改めて調べてみることにしました。
当時から、預かった子供はうちで病院に連れて行き、健康診断をしていました。その時、できるだけ細かい検査をします。そして、卒業後もそれがどうなるかという追跡調査をやってみました。
すると、かなりの病気、例えば「胃潰瘍」「ぜんそく」「花粉症」「アトピー性皮膚炎」、それらが相当なパーセンテージで直るという結果がどんどん出てきたんです。それもだいたい1ヶ月程度のトレーニングで。
しかし、この頃はまだ、どうしてそうなるのかといったことはあまり考えていませんでした。
当時私が盛んに言っていたのは、「ヨットは精神力を鍛えるんだ」ということです。「精神力というのは自分の持っている能力をきちんと発揮する力のこと。だから精神力を鍛えれば免疫も正常になる、病気も直る」と言っていました。非常に抽象的な説明でごまかしていたわけです。
それから、さらに細かく調べてみると、赤血球の数が異常に少ないとか、白血球の数が異常に多いとか、逆に少ないとか、そういう血液そのものの異常を持つ子供がかなり出てきました。
それも後追い調査をすると、だいたい1〜2ヶ月間のトレーニングで、血液の成分なり機能なりが正常化するということが分かってきたんです。
血沈のおかしい子もいたし、リンパ球の分布がおかしい子もいました。白血球の分布がおかしかったり、数がめちゃめちゃだったり。
白血球が2〜3万となると、これはもう白血病、あるいは盲腸などの炎症疾患があるということになるはずですが、そういうものがなくても白血球が増加するんです。あるいは初めから増加している子供達もたくさんいました。
[恒常性を保てなくなっている]
本来、入校後すぐ健康診断をし、OKが出たらトレーニングをするのが普通です。
しかし、当時は入校後、朝のトレーニングなどをした後で健康診断に行くという子供が何人かいました。これは、急激に生徒が増えたためです。
その時、偶然気がついたことですが、朝のトレーニングをするとやけに白血球数が上がる子供が2〜3割出てきたんです。「ああ、これだ」と思いました。
今までほとんど体を動かさなかった子供が急に動き出したわけです。体は疲れをとらなければいけません。簡単に腱鞘炎などを起こす子供達ですから、筋肉そのものも炎症を起こしているかもしれません。
そういうことで白血球がある程度増えるのは分かるんですが、普通1万までは増えません。つまり、白血球は必要だから増えているんだけれども、その増え方を調節するメカニズムが狂っている、調節ができなくなっているんだということになります。
さて、そういうものの調節をする場所とは、脳幹の中の視床下部ですから、その機能が低下しているわけです。それが良くなるということは、視床下部の機能が上昇したということ。機能が上昇すれば、白血球を適当な数に調節できる、あるいはリンパ球の分布を調節できます。
これが正常なホメオスタシスで、体の働きを一定に保つ恒常性の1つです。
しかし、これらのことに思い至り、結果が出始めた頃に私は逮捕されました。そこで、拘置所の中で、じっくりと今までの色々な状況を説明できる方法を考えてみたんです。
[情緒障害と病気は同根]
うちにくる、いわゆる問題児というのを見ていると、あまりにも高い確率で、そういった病気や体の異常が現れていることに気がつきます。
当時から、この原因は体の方ではなく、脳にあるに違いないとは思っていました。
そう考えた理由の1つに、「側弯症」がありました。S字の背骨、あるいはZ字の背骨。
それともう1つに「ぎっくり腰」があります。これらに子供がどうしてかかるのか。専門家は、「ぎっくり腰」も「側弯症」も子供の筋肉が弱いからかかると説明しています。しかし、それはおかしい。
我々はむしろ、姿勢を制御する脳の方がおかしいんではないかと考えました。
というのが、非行少年を見たら分かる通り、みんなデレッとした格好をしています。公園なんかでシンナーを吸っている連中が、みんな同じようにおしりを落とし、膝にひじをつくような格好をしている。これは、何も日本だけではなく、世界中そうでしょう。
この原因は、姿勢をピシッとするという能力が欠けているからではないでしょうか。筋肉の問題では解決できない、おかしなことが色々出て来ます。
[「ぎっくり腰」も脳の問題]
例えば、「ぎっくり腰」の場合には背骨がずれるわけですが、背骨を引っ張っているのは筋肉です。片方の筋肉が引っ張りすぎるから、背骨がずれたりするはずなんです。
つまり、それだけ引っ張る力がある。それなら筋肉が弱いことが原因とは言えないんじゃないのか。
姿勢を制御することができないくらいに筋肉が弱るということがありうるんでしょうか。もしそんなに弱いなら、もう背骨も何もガタガタになって、「ぎっくり腰」どころではなく、背骨自体が崩れてしまうんじゃないのか。
そう考えると、筋肉が弱くなったから「ぎっくり腰」になったという説はどうも信用できません。それよりも、筋肉の引っ張り方がおかしいんじゃないか、さっき言った、調節の機能がおかしいんじゃないか、と考えました。
我々はヨットをやりますが、ヨットのマストはアルミでできていて、フニャフニャのものです。しかし、実際に海で操縦している時には、そのマストに10トンも20トンもの力がかかります。それでもあのマストは折れません。
しかし、マストはストローと同じで、真上から押しても決して折れないけれども、横からほんの少し押すだけでたちまち折れてしまいます。
背骨もこれと同様に、そのままでは直立することもありえないし、きれいなカーブを描くこともありえません。それを、筋肉というワイヤで引っ張っているわけです。だからきれいなカーブも描けるし、直立もできる、負荷にも耐えられる、逆に引っ張りにも耐える。
その筋肉に指令を与えるのは、姿勢制御の“脳”です。
「ぎっくり腰」を起こすというのは、その脳の機能が低下していて、筋肉に対する司令が狂うからです。だからどこかを引っ張りすぎてしまう。引っ張りすぎた部分が少しずれる。そして「ぎっくり腰」を起こす。そういうふうに考えるのが最も妥当だと思います。
それから、ヨットをやって「ぎっくり腰」を起こす人がいます。筋肉の弱さが「ぎっくり腰」の原因なら、これはもう矛盾ですよね。ヨットマンの筋肉は人並み以上に強いはずです。それが「ぎっくり腰」を起こすんですから。
もし、「ぎっくり腰」そのものがうちのボードトレーニングで直ったとすると、筋肉のトレーニングはほとんどしなくても、「ぎっくり腰」が直せるということになります。するといよいよ筋肉ではなく、脳の問題、ということになるわけです。
ですから、カイロプラクティックで「ぎっくり腰」を治しても必ずまた起きますが、うちのトレーニングで直しておけば、まず再発しません。
というのが、私自身が拘置所の中で「ぎっくり腰」になったんです。狭い所に座っているだけで、あそこはやっぱり、脳の機能が低下する場所ですから。
保釈になった後すぐ、痛いのを我慢してヨットに乗り、ボードトレーニングもしました。だいたい2〜3ヶ月かかったでしょうか、その頃から腰の痛みが消え、「ぎっくり腰」はその後全く起きなくなりました。
筋肉のトレーニングなら拘置所の中でもやっていましたから、やはりこの違いは脳の方にあると思います。
[「反射」機能低下の証明(1)]
さらに、「花粉症」という免疫の問題をみてみましょう。
脳の色々な作用の中の1つに[反射]というのがあります。[脳幹反射]。
目の前に何かが現れたら思わず目をつぶりますが、これは目の損傷を防いでいるわけです。そして思わず手が目の前に出てくる。頭を抱え込む。これは脳を守ろうとしているわけです。そうやって、自分の身を守るため、我々には色々な[反射]が起こります。
熱いものに触れば、考える前に手が引っ込む。手を引っ込めてから熱いと思う。つまり、熱いという感覚が起こるより反射の方が速いわけです。これらはすべて[脳幹反射]です。
問題児といわれる子供達の脳の機能が低下しているとすると、その[反射]の機能も低下しているはずです。それを色々なもので試してみます。
例えば[対光反射]、光を見たとたんに瞳孔がキュッと縮まるというものです。その機能が低下してはいないか。
うちで既にトレーニングを終えた子には、低下の傾向は全く見当たりません。そこで、入って来る子供みんなに、懐中電灯の光をパッと当てるという実験を試みました。同時に、もう1人が横からその子の瞳孔の具合いを見ます。
すると、2割弱の子供の瞳孔反射が非常に鈍いということが分かりました。さらにその内の2割ぐらいの子は、全く瞳孔が縮まりません。また、左右の縮み方が違う子もいました。
その子供達に対し、トレーニングを続け、だいたい1ヶ月後にまた再検査をします。すると全員直っている。
瞳孔反射のためだけのトレーニングをした、ということはありえませんから、[反射]の機能そのものが上がったと考えるほかありません。これは、うちのトレーニングが脳のトレーニングになるという、1つの間接的な証明だと思います。
[「反射」機能低下の証明(2)]
また、ボールを投げられても手を出すことができず、顔で受けてしまう子供が、やはりかなりの数います。明らかに防御反応というものが低下しています。
これに対する理由づけは、一般に「ボール遊びをしないから」と言われているようです。「経験が少ないから、ボールをとるのが下手だから」そうなるんだということ。しかし、いくら経験が少ないとはいっても、多少は動くでしょう。それが、全く動かない、反応しない子供がいるんです。
うちでは、そういう子供達に、それ以後ボールを扱うことを禁止します。そして1ヶ月ぐらいたって、改めてボールを投げてみます。すると見事にボールを取ることができる。少なくとも、手が出て来て、ボールを弾くことができるようになっています。
その前1ヶ月間はボール遊びをしていないわけですから、経験不足が理由ではないことが分かります。これは、やはり[反射神経]がダメだった、つまり脳の機能が低下していたということの証明です。
このように、一般に専門家が言っていることに対し、現場の我々はたくさんの矛盾を見つけることができます。ですから、明らかに新しい考えを持ってこないといけないんです。
ところが、最初に指摘したように、登校拒否を治す「マル適」な施設を、彼ら専門家が決めている。
登校拒否にしろ、色々な神経症の多発にしろ、これは日本の歴史上初めて起こったことです。だから、今まで通りの理論が通用するはずもありません。この問題に関しては、今のところ“権威”は存在していないのです。
[肉体と精神は切り離せない]
次に、人間の「精神」についてお話します。
精神というものは確固としてあります。しかし、我々は精神があることは感じますが、見ることはできません。そこで、精神が具象化したものが「行動」ですから、行動からその精神を探るより仕方がありません。
そうなると、精神そのものに対して何となく期待を抱いてしまいます。精神だけは自由だとか、支配されないとか…。そういうふうに思うのはいいんですが、段々精神そのものが神がかり的になり、何か違うものになってくる。そうなると、現在自分が持っている精神は昔からあったし、これからもあるんだから、何もトレーニングする必要がない、ということになってしまいます。
ところが、その一方で、知育や徳育を行う。これは、明らかに精神をトレーニングしていることになります。
では、いったいどこをどうトレーニングしているのか。それが、「精神」だけに着目すると非常にわかりにくんですが、例えば「花粉症」とか、「重症筋無力症」とか、「がん」とかという免疫の問題、そういうものに目を向けてみると、割と簡単に説明できるようになります。
というのが、よく、精神状態によって「アトピー性皮膚炎」がひどくなるとか、精神力で「がん」を治すとか、そういうことを言いますよね。そうなると、免疫の問題と精神の問題がどこかで結び付いているはずです。
我々も、ヨットスクールで結果だけは出せますが、そういう問題についてゆっくり考える暇がありませんでした。ところが、ああやって逮捕され、考える時間ができたおかげで、我々の精神論をつくることができたんです。これで、今まで非常に抽象的に言われていたこと、それを、自分としてはとても具体的に説明できるようになりました。
[「重症筋無力症」のメカニズム]
例えば、「重症筋無力症」というものが直るのかどうか。
筋肉は脳からの指令で動きます。脳から出るホルモンが、神経系に順番に伝わり、その神経の端からもう1つ同じホルモンが出ます。そのホルモンを、受容体という電話の受話器みたいなものが受けて、筋肉が動くんです。
この受容体というのは筋肉についています。「重症筋無力症」を治らないと言う専門家は、その受容体が神経細胞で、神経細胞は決して復活しないから治らない、という言い方をします。もしそうなら、非常に不思議な現象がたくさん出てきます。
「重症筋無力症」の症状が、ある時急に止まることがあるんです。もし、自己免疫でどんどん受容体をやっつけているなら、病気は悪くなる一方のはずです。
自己免疫という兵隊がたくさんいて、敵兵である受容体がどんどん少なくなる。すると、ある時点から一気にやっつけられますよね。ところがそうならず、逆に平衡状態になって途中で止まることがある。これをどう説明すればいいのか。
これに対する答えはたった1つでしょう。
その受容体が再生しているということです。
敵だって、自分達の味方がやられているんだから、これは大変と、どんどんを兵隊をつくっているはずです。味方の兵隊の損失と、敵の兵隊の増える率が一定しているから、症状が途中で一定になるんでしょう。
だったら、この受容体という細胞は、決して再生しない神経細胞などではなく、筋肉細胞だという事になります。それなら、自己免疫の抗体の生産をストップしてやれば、「重症筋無力症」は直るということになるんです。少なくとも、我々はそう考えています。
ただ、途中で変性疾患というのになってしまった場合はどうすることもできません。我々のやり方は治療ではなくトレーニングですから。
[精神症状と肉体症状は同時に現れる]
今お話していることの中で、最も注目して欲しいことは、精神症状を持つ人には、必ず肉体的な症状も並行して現れるという事実です。
今、マスコミ等は片側だけを取りざたします。アレルギーならアレルギーを、肉体的な症状として。登校拒否なら登校拒否、非行なら非行を、精神的な症状としてです。
しかし、その2つを結びつけて考えないといけません。これらは別々に現れるのではなく、一緒に現れているんですから。
見た目では分からない、例えば白血球数の異常とか、そういう障害も含めて、精神症状を持つ患者に必ず何らかの肉体的な症状が並行して現れています。
これら2つに共通して考えられる項は、“脳”以外にはありえません。
もし、脳の機能が低下しているとすると、その機能低下と、さらにもう1つ、低下した機能は狂いやすいということ、この両方を考えてみないといけません。
我々が今までずっと見てきたところ、非行というのは、脳の機能の低下が原因だと思われます。
例えば、先日、幼児まで含めて4人を殺すという事件がありました。理由は、ヤクザに追われていたから、金が欲しかったから、というものでしたね。新聞に載っていることですから、どこまで正しいかどうかは別として、事実だけを拾えば、19歳の男が4人の人間を殺したということです。
通常、我々が彼の立場に立ったとして、幼稚園児も含め、4人も人を殺せるでしょうか、200万円のために。
我々には決してそういうことはできません。それが正常ですね。では、どうしてできないのか。
それは、そういうことをできないようにするメカニズムが、我々の脳の中に組み込まれているためです。
[「罪の意識」のメカニズム]
以前、女子高生を殺してコンクリート詰めにしたという事件がありました。それから、名古屋で起きたアベック殺し。
これらに対する、戸塚ヨットとしての説明は、「徳」という本能が欠けているということです。つまり、「罪の意識」が欠けている。
「罪の意識」というのは、例えばその辺にいる子供を連れてきて首を締めてみた時、子供が泣きわめいたとします。苦しそうな、悲しそうな、痛そうな声を出したとします。その声を聞いた途端、あるいは子供が泣く状態を見た途端に我々に湧いてくるものです。
これは、我々にとって大きな不快感ですから、『快を求め不快を避ける』という行動原理により、我々はその不快から逃れようとします。逃れるためにはその行動(子供の首をしめる)をやめなければいけません。だからやめる。だから、子供を殺さずに済むし、怪我もさせずに済むんです。
これが我々の持つ正常なメカニズム。
あるいは、子供というのは可愛いものですが、どうして可愛いと感じるのか。自分の子供が1番可愛いけれども、よその子供だってやっぱり可愛いですね、特に幼児は。
この感情のメカニズムはもっと単純です。
子供というのは弱い、幼児はもっと弱い、だから成人が殺そうと思えば簡単に殺せる。しかし、殺せば種族が滅んでしまうので、弱い者を殺さないというメカニズムが、我々の本能の中に組み込まれている。
こうして、我々は子供を可愛がるようになっているんです。
『快を求め快を避ける』――これが全ての人間の行動原理です。可愛い子供は、我々に快感を起こさせます。その快感を起こさせるものを殺すなどというバカなことを、我々はしません。
あるいは、子供が苦しむ姿は我々に不快感を与えます。だから、その不快から逃げるために、子供を苦しませるという行為をやめる。
[精神症状も肉体症状も“脳”の問題]
これは、親子関係にもあてはまります。
子供は、自活できないから子供です。自活できるんだったら大人。つまり、子供というのは大人が生かしているんです。その生かしてくれるものである自分の親に対し、攻撃を加えれば、子供にとっては自殺行為です。
だから、我々は親を憎らしいと思っても、攻撃衝動が起きても、それを親に対しては振るわないんです。そういうメカニズムを持っているんです。
しかし、そのメカニズムが狂い、親だけを攻撃するということが現実にはありうる。家庭内暴力です。これは、本能が狂っているとしか考えられません。
では、なぜ狂うのか。脳とはいわゆるコンピューターの働きをしますから、情報処理機能を持っています。その中の調節するという機能、ホメオスタシス、この機能が低下したために、狂いが生じるのではないでしょうか。
本能の狂いについては、色々な人、脳生理学者なり宗教家なりが、脳幹の視床下部の機能低下が原因だというところまでたどり着いています。しかし、視床下部の機能が低下すると、なぜ本能が狂うのか、というところまでは言及していません。
また、一部には脳全体ではなく、視床下部だけを大事だとする向きがあります。ホルモンの中でも、副腎皮質ホルモンだけが重要であるとか。
しかし、これは間違っています。“脳”全部が重要なんです。ただ、視床下部の能力低下というのが非常に目立つことは確かです。
先程申しました、姿勢の問題。これは明らかに視床下部の問題ではなく、もっと他の脳の問題でしょう。免疫異常に関しては、まだ、我々にはどこの問題かよくわかりません。
昨今、「花粉症」がテレビ等で盛んにクローズアップされています。
しかし、問題なのは、「花粉症」という症状自体ではなく、「花粉症」を起こすほど免疫が狂っている、つまり、脳の機能が低下しているということです。
「登校拒否」と「花粉症」は同じ原因です。おそらく「がん」もそうでしょう。
しかし、これを言うとお医者さんまで敵に回し、とても太刀打ちできなくなるので、とりあえず、実際に得た成果だけを挙げておきます。
[「膠原病」が直った]
以前、うち(戸塚ヨット)で「膠原病」の人をトレーニングしたことがあります。
この人の場合、小学生の頃からずっと「慢性関節リューマチ」があり、年ももう48歳でしたから、たぶんトレーニングでは直らないと思っていました。
ただ、「膠原病」には必ず免疫異常という状態がありますから、それに対しては何らかの作用を与えることができるんでは、ということで始めてみたんです。
「膠原病」の人の特徴として、まず、朝なかなか起きられません。
というのも、血管の機能が低下しているために足先まで血液がいかず、夜は足が冷たくて眠れないんです。夏でも必ず毛糸の靴下を2枚履き、やっと眠れるような状態。しかし、それだけやっても朝になると足が動かない。血液がいっていないからです。
まず、何とか起き上がろうと半分背中を挙げ、足を投げ出した状態にしてからしばらくじっとします。すると、心臓が上にあるから血液が動きやすくなり、少しずつ血が通い始めます。10分ぐらいそのままでいて、それから足を縮め、自分でマッサージをするそうです。そこでやっと動けるようになる。
しかし、立ち上がると、今度は骨そのものが折れそうな気がするそうです。急には動けないので、1時間くらい、少しずつ運動の機能を高めながら、やっと普通の生活ができるようになる。そういう状態でした。
さらに、もう1つ顕著に現れていたのは、「日光アレルギー」です。太陽の下に行くと、たちまち水疱ができてくる。
だから、4月になると決して素顔をさらしません。ものすごく厚く日焼け止めを塗るとか、大きな帽子をかぶるとかして、手には必ず手袋をします。それでも夏になると、顔にブツブツが出てくるそうです。
その人のトレーニングを9月頃から始めましたが、次の年にはそういった症状は全く出ませんでした。夜も靴下を履かずに寝られるようになり、「膠原病」の状態は8〜9ヶ月くらいで完全に消えてしまいました。
そこで1つ実験をやらしてもらったんです。「膠原病」の症状が完全に消えた状態で、一切のトレーニングをストップしてみました。
すると、半年くらいで「日光アレルギー」が現れ、やっぱり「やらないと元に戻る」ということが証明されたんです。