U章 ヨットスクールがしてきたこと(後)
進歩欲求はどんな人にもある。しか前へ進むことができない
■手紙A――入校希望者(25歳・サラリーマン)本人からの報告
「前略私は25歳の会社員です。突然、このような内容の手紙を書いたことをお許し下さい。
私は生来、気の弱い人間で、中学2年の頃、人に会うだけで赤面する赤面恐怖症になり、女の子はもちろん、授業中、先生の顔をまともに見ることができなくなりました。気が弱いから、皆からそこをつかれるし、自分でも何故こう気が弱いのかと、自分を責め、ついにノイローゼ寸前までいき、これ以上自分を責めたら気が狂うと思い、無理にこの気の弱さは必ず直る、直す方法が見つかると自分に言い聞かせ、あの目の前がまっ暗になった時期を何とかごまかしました。
勉強は、授業中、人か恐くて集中できず先生の顔を見られないのでいつも下ばかり向いていて、先生には何だお前は下ばかり向いて寝ているのかと言われたことも度々ありました。人が恐いなどと間違っても言うわけにいかず、言えば気狂い扱いされるのがおちで、ただじっと耐えるだけでした。ただ、なにくそ、負けるかという気だけでやってきました。
中学、高校、大学と何とかやってきましたが、大学時代など、教授からお前の神経じゃ死んだ方がいいんじゃないのかと皮肉を込めて言われたこともありました。相変わらず気が弱く、人が恐く、このなにくそという気持ちも空回りするようになってきました。
授業に集中すべきエネルギーを人に対する緊張で使い果たし、帰ってからは自分の理想と現実の姿のギャップを、自分に納得させる理由として、自分が弱いからだと責め、もう1つ、神経が参ってきてしまいました。
1年前、就職しました。いい会社で、いる人も皆いい人ばかりですが、ここでさえまともな人間関係が作れず、会社に出るのもつらいありさまです。
これまで自己催眠、呼吸法、ヨガなどやってみましたが全く効果が出ず、もう死ぬしかないと思います。高校時代、東京正生学院という対人恐怖症を直すところへ1ヵ月ほど行きましたが、全く効果ありませんでした。
もう会社をやめて、今まで貯めたお金でヨガ道場へ行き、断食をやってみて効果がなかったら死のうと思い、このヨガ道場に、もしできるなら働きながらヨガの訓練ができないものかと手紙を書いたところ、残念ながら道場内で働きながらヨガの訓練はできないとのこと。それはともかく、あなたの考えには誤りがあり、強くならなければ自分の夢が叶わないと思ってはだめだ、1年か半年、あなたの夢が叶った姿を朝、昼、晩、くっきりと頭に思い浮かべなさい。そうすればそれが実現します、という返事でした。私としては失望しました。
確かに私の努力が足りないかもしれません。根性がないからかもしれません。でもこの弱い神経でも、ただ何くそと肩に力を入れてやってきたんです。結局、何も得られず、もう神経の限界が来てしまいました。
中学時代、自分の性格に絶望しながら今まで生きてきたのは、もっと強くなれる、強くなる方法が見つかるという考えを無理に自分に思い込ませたからです。それだけが支えでした。それがなければ、気が狂うか自殺していたでしょう。
先生のヨットスクールの記事を読み、約400人の登校拒否児や、家庭で暴力をふるう子供達を直したと知り、これを私の最後の賭にしたいと思いました。
(中略――入校に際しての経済的事情が書かれている。)
入校待機組が80人も控えているそうですが、たとえ1年間でも普通の人のように生活できたらこんな幸せなことはありません。どうか私を、入校待機組に加えて下さい。速達で出したのは、少しでも早く御返事をもらいたいからです。強くなれる可能性があるのだと思えるだけでもありがたいのです。会社では、これだけ人間関係がまずいと、会社からクビを言い渡されても何も返す言葉もないと思っています。もう限界に来ています。どこの会社へ行っても同じでしょう。
最後に、恐らく先生の所へは、私のような人間や、そんな人を子供に持つ父兄から手紙が沢山来ていることでしょうから、わずかですが切手を同封しますので、どうか使って下さい。草々」
私たちは子供たちが作るミニ・社会に介入しようとしません
食事の時、面白い傾向が現われます。ひとりの犠牲者が出たからといってすべてを否定できるでしょうか