子供の顔が輝いていた!

――ロシア視察旅行を終えて――

戸塚ヨットスクール 校長  戸塚 宏

 私はかねてから海外の教育事情を見てみたいと思っていました。先般、以前からご支援頂いている方(菰池邦好氏)のご尽力でロシア視察を実現することができ、ウラジオストックで、公立・私立学校、大学、刑務所、少年用の拘置所などを見学しました。

 そこでまず驚いたのは、ロシアの子供達の顔が私の予想した通りだったことです。

 公立・私立の学校で、私は何の予告もなくいきなり教室に入っていきました。するとどうでしょう。生徒全員が立ち上がるのです。ただ立ち上がって静かに私を見つめています。「座ってくれ」と言うまで座りません。これが儒教でいう"礼"です。ロシアの子供には、儒教の伝統などなくてもちゃんと"礼"が備わっているのです。
 これが日本ならどうでしょう。知らない人がいきなり教室に入って来ても、子供達はジロッと一瞥するだけで、おしゃべりを止めようともしません。
 そしてもっと驚かされるのが顔の表情。ロシアの子供達の顔は輝いています。かつて、日本の子供達がそうであったように、活き活きとしているのです。私達が日常見ているしまりのないオカシナ表情の子供達とは大違いです。

 ロシアの子供達は大変貧しいです。親が酒飲みで仕事をしなかったりと、劣悪な環境に置かれています。しかし顔が輝いている。なぜでしょうか。彼らははっきりと未来に向かって生きているのです。粗末に扱われたり、ろくな食事ができなかったり、殴られたりしながらも、その現状から逃れるために"進歩"を目指しています。
 しかし、日本の子供にはこれがありません。何もかも満たされた生活の中、未来に思い描くものもなく、"進歩"の必要性がないままに生きています。だから顔がオカシクなる。彼らのオカシナ顔は現状を維持しようとしている姿であって、将来を目指してはいません。

 こうしたことは日本を発つ前にある程度予想していたことですが、自分の予想通りであったという事態を目の当たりにして暗澹たる思いにとらわれました。


"未来"に目を向けた教育を!

 刑務所には大人も子供も入っていますが、大人の目はドロンとしています。彼らには"未来"がないからです。刑務所を出ても働くところがなく。食べていけないのです。だから刑務所にいる方がましで、そうなると必然的に夢も希望もなくなります。まるで死んだような目になります。
 しかし、少年拘置所にいる子供達は、不良の顔ではありますが目が光っています。いい悪いは別にして、彼らなりに将来の夢と希望を持っているのです。

 ロシア国内で私達を案内してくれたのは、「ニューリッチ」と言われる豊かな階級の人々でした。彼らにはいつも女の子が群がっています。彼女達の、見るからに売春婦といういでたちにびっくりさせられたものです。ところが、新潟空港に帰るとさらに驚かされました。日本の若い女の子は、ロシアの売春婦よりはるかに下品な顔をしているではありませんか。「自由だ、自由だ」ともてはやされた結果がこれ。マスコミの責任です。
 我々は日本の日常にどっぷりとつかっているため、こういった現状に鈍感になっているのではないでしょうか。新幹線で漫画を読むサラリーマン、がっかりさせられますよね。

 日本の子供とロシアの子供の圧倒的な違い!これでよりハッキリしました。今の日本の教育は間違っています。子供の"今"のためではなく"将来"のためになすべき教育が、日本ではなされていないのです。

(2001.10.18 於:第107回東京セミナー)