情緒障害児問題に寄せて(四)


「性の異常」

横田 建文


三、情緒障害の治療(承前)



(3)情緒障害と文明病


 戸塚ヨットスクールの訓練の本質は以上のようなものであったと理解される。

 登校拒否も非行も家庭内暴力も、全てヨットで治すというのはとてつもないことのように思えるが、「安全に死と直面させて脳幹をトレーニングする」と考えれば、全く当り前の治療を行っているに過ぎないと思えてくる。要するに、自然から遠ざかり過ぎた人間を自然の中に戻しているだけである。

 人間には知的判断力や思考力の訓練だけでなく、感情や意欲の訓練も必要であって、適度な苦痛や恐怖体験を通じて耐性を高めることが人格形成の基礎ともなる。少なくとも半世紀前までの人間社会には、そうした訓練が自然成長的に行われるようなメカニズムが組み込まれていた。
ところが、ソフト化の進展した現代社会にあっては、危険な遊びや乱暴な行動がことごとく子供の世界から排除され、マンションのベランダや公園内での管理された遊びだげが許されている。
ナイフで指を切る痛さと出血の恐怖、蛇を前にした時の足のすくむ思い、ガキ大将にいじめられる悔しさ、暗い夜道の心細さ、指がしびれるほどの寒さ、目が回るような空腹、口をきくのもつらい疲労、――こうしたものの全てが今の子供達にはない。あるのは、エアコン、自動車、エレベータ、エスカレータ、テレビ、ステレオ、ゲーム電卓、ハンバーガ、ソフトクリーム、スナック菓子、叱らない大人、逃げ腰の教師、頼りない父親、過保護ママ、etcである。

 禅の世界に「全機現」という言葉があるそうである。「全ての機能を発現する」というほどの意味であるらしいが、今の子供達にあっては、大脳のごく一部分の機能は十分活性化されていても、感情、意欲、情動、を作り出す脳幹域の機能はぬるま湯に漬けっぱなしで発現されることがない。

*

 ここまでくれば、情緒障害は特殊な状況下での心的体験が作り出す異常状態などでは断じてなく、文明化した人間社会の過剰にソフトで反自然的な生活様式が必然的に生み出した一種の生命低下現象であるといわざるを得ない。
つまりこの問題の本質は、自然を征服した気になって、楽で快適な生活を追い求めて人工的な環境を作り過ぎた人類に対する自然のしっぺ返しなのである。
自動車は人間の行動半径を拡大し、生産の発展を加速するが、一方で大気汚染や騒音、脚力の弱い人間、などの元凶になっている。エアコンは病人や老人にとってかけがえのない文明の利器であるが、その快適さ故に気温の変化に対する人間の抵抗力を弱め、カゼをひきやすい体や冷房病の人間を大量に作り出しているのである。
我々の周囲を取り巻く便利なもの、快適なもの、安逸なものはどれもこうした側面を持っており、その分量がある限界を越えた時、予想もしなかった病理が出現して我々を驚かす。側腕症、喘息、性的退廃、衝動殺人、薬物依存、肥満、ノイローゼ……およそ文明病と呼ばれる病理の全てが、心身のバランスを無視した過度の安逸と密接に関係しているということに思い至るのである。

 人間が自然の一部であることを忘れて振舞うとどんな目に合うかは、エンゲルスが『自然の弁証法』の「猿の人間化成に当っての労働の役割」において、驚くべき的確さで指摘している。


 要するに、動物は外部の自然を利用し、そして単純に自分の存在することによって自然の中に諸変化を起させたまでである。人間は自分のもたらす諸変化によって自然を自分の諸目的に役立つようにし、自然を支配する、そしてこのことこそが人間と万余の動物との究極の、本質的な、区別である。しかもこの区別を実現させるものは、これまた労働なのである。

 それにもかかわらず我々は自然に対する我々人類の勝利にうぬぽれ過ぎるわけにはゆかない。そういう勝利の度毎に自然は我々に仕返しをする。
なるほどいずれの勝利も1番線においては我々が当てにした結果を持つのであるが、その勝利も2番線、3番線においては全然別な、予見されなかった諸作用を持ち、これら諸作用が甚だ度々前記の一番結果を再び廃棄するだけのことになる。(略)

 こういう次第で我々は、征服者が他民族を支配するような具合に、自然の外部に立っている人間がするような具合に、自然を支配するのでは毛頭ないのだということ、――そうではなくて、血と肉と脳味噌とをもって我々は自然に属し、自然の真ただ中に立っているということ、そして、我々の支配なるものの全部は、他のすべての被造物にすぐれて自然の諸法則を認識することができ、そしてこれを正しく応用することができる、ということにこそ存する次第だということ。これらのことを1歩1歩思い起こさせられるのである。

(エンゲルス「自然の弁証法」岩波文庫)


(4)成人における脳幹機能低下


   情緒障害がソフト化社会の生み出した文明病であるならば、戸塚ヨットスクールに入校しなければならないほど重症の情緒障害児の背後には、10倍の数の中程度情緒障害児、100倍の数の軽度情緒障害児、喫水線スレスレで生活している数10万人(あるいは数100万人)の青少年や成人が存在しているはずである。

 未成年者については、冒頭に記した。中学生の登校拒否2万人、高校中退者10万人、刑法犯少年20万人(昭和57年当時)という数字が実状をよく物語っている。
成人についても20〜30歳前後の若者に異常者が続出しているのであるが、その現われ方が異様かつ不可解であるため、人々は「ほとんど病気」、「ピーターパン症候群」、「宇宙人」、「1億総心身症」などという曖昧な表現を使うことで事態の深刻さから目をそむけようとしている。
しかし、若者達にみられる〈性の異常〉は、この問題が取り返しのつかない事態を招きつつあることを示している。

 評論家の田原総一郎氏は昭和59年春に、性の異常を持つ若者に面接取材しまとめた、「セックス・ウォーズ」なるレポートを「週刊文春」に連載した。
このレポートのなかで田原氏は、取材の度に経験する「とまどい」を率直に述べている。もちろんその混乱は、氏がソフト化社会の脳幹機能低下現象という概念には思い至らず、コンピュータ・ソフトウエア開発業務の苛酷性や偏差値教育の弊害に原因を見出そうとする姿勢から起るべくして起こるのであるが、氏は混乱は混乱として記述し、あえて結論めいたことを導こうとしなかったように思える。
このようなケースでは、凡百の評論家は事実を曲げてでももっともらしい結論を出そうとするものだが、田原氏はそうした離れ技に対して慎重であった。
その結果として、(従来の考え方では説明できない)「混乱すべき事態が起きている」という正確な状況認識を伝えるのに成功しているのである。


 東京・初台にある神経科の病院。病室の数18ばかりの、どこにでもありそうな個人病院である。現在19人の男女患者が入院している。

 ところが、そのうち8人の男の患者たちは、昼間は病室にはいない。彼等の病室を覗くと、ベッドに毛布がきちんとたたんであって、ベッドの脇の壁には、背広やワイシャツが何着も吊ってある。ネクタイも何本もぶらさがっている。

 じつは彼らは、病院に入院しながら、昼間はそれぞれの会社に出勤しているのである。

 院長の関谷透からこう説明されたときには、私はべつだん奇異には感じなかった。

 精神・神経障害、つまり、心の病を治療するためには、入院させて医者が細心の注意を払いながら徐々に社会復帰させる、といった配慮が必要なのだろうと勝手に納得していたのだ。

 ところが、関谷透の話では、「病気が治っても退院したがらない患者」、いや、むしろ「治りたがらない患者」がかなり多くいるというのである。「はっきり言って、家へ帰るのが嫌らしいのですよ。だから病院から会社に通っている……」
 (略)

 こうした患者たちのほとんどが、仮面鬱病で、関谷の話では現在、彼の病院にやって来る患者の何と25パーセントが、この仮面鬱病だということだ。

 「従来の鬱病の範疇には入らない。その意味では本当の鬱病ではない。ウソの鬱病……。しかし、もちろん患者たちは、ウソをついているのではなく、本当に苦しんでいる。だるい、疲れる、やる気が起きない。そして不眠症で、インポテンツ……。本当の鬱病はインポテンツにはならないのですがねえ」

 そして関谷は、「こんな奇妙な病気は10年ぐらい前まではなかったはずだ」と語った。10年ぐらい前まではなかった新病=仮面鬱病が急増して、この精神科医のドアを叩く患者の25パーセントに達している。
 (略)


〔ケース・4〕 28歳 男性 コンピュータのプログラマー

 やわらかい表情だが、眼鏡の奥の目と口元に神経質そうな陰が見える。長髪で顔色はあまりよくない。

 都内有名私大仏文科を卒業後、小さな出版杜に就職したが倒産。その後ソフトウエア会社に入った。2年前に10年近くつきあっていた女性と結婚。子供はいない。

 「仕事は、主に財務経理のプログラムづくりで、ときには3〜4日も会社に泊り込んだり、普段でも大体帰りは10時頃で、まあメチャクチャです」

 あまり抑揚のない、どちらかといえばクールな話し方だが、視線は妙に粘着性がある。

 そしてセックス歴を問うと、高校時代に友人の母親が相手だという決して平凡とはいい難い初体験を、その内容とはウラハラにきわめて淡々と、そっけなく披露した。

 その後、大学時代には何人かのガールフレンドもいたようだが、現在の妻と知り合ったために、「セックス経験はそれほど豊かでにない」ということだ。

 「でも、決して淡白な方ではなくて、ずいぶん頻繁にやったこともあるのですが、最近はね、あまり感じないというか、やりたくないというか。全然セックスしなくても平気で、正直いってそのことで悩んではいるのですよ。女房にも責められるし……」
 (略)

 彼は、最近は新聞もほとんど読まないし、週刊誌も月刊誌も読まないそうで、その意味では、まさに関谷透が指摘した"朝刊症候群"の症状を呈しているといえる。

 「勃起はするんですよ、ところが挿入して、いろいろやっている、努力しているうちに、何というか、義務感……。射精しなきゃいけない、という義務感みたいなものが顔を出してシラケてしまう。
それに、女房が一生懸命に頑張って、よろこびの表情というか、そういうものを示すと、何とかそれに応えてやらなきゃいけない、と思って、そうすると、よけいシラケてしまって……。
一時期はマスターベーションの方がフィットする、というか、気持ちがいい、ということもあったのですが、今はそれもないな」

 現在では、セックスはせいぜい月に1回、ときには2ヵ月に1回なんてこともあるそうだ。念のために、あらためて記しておくが彼は28歳。結婚2年目で、「妻には何の不満もなく、お互いにきわめて仲がよい夫婦」だというのである。

 ――トルコ風呂なんかは、あまりいかない?

 「友人に連れられて1度だけ行ったことがあるけど、好きじゃないな。もちろん、ちゃんと勃起はしますよ、だけど億劫で……。最近はバアやクラブに行くのも煩わしくて……。これで昔は、ずいぶん付き合いのよい方だったのですがね」

 ――いつ頃から、その付き合いのよさがなくなったのですか。

「やっぱり、いまのソフトの仕事を本格的にやり出してからですよ。
そういえば、1度……、パソコンでグラフィックの絵を画いたことがあるんです。非常に苦労して……、それに自分でも結構イイ線いったと思える出来映えで、そこで家に持って帰って女房に見せようとしたのですが、夜中で女房は寝ていて、それを叩き起して見せたら、面倒くさそうにいいかげんな返事をしたんです。そこでカッとなって、もうちょっとで、女房を蹴り飛ばす、ムチャクチャに……。何かわけのわからない感情が爆発しそうになって、危うく懸命に抑えたのですが、これは、オレ、どこかおかしくなっているぞ、と。だって、こんなこと、それまで絶対になかったことですからね」

 彼が、「まかり間違えば"事件"になりかねなかった」と述懐するのを聞きながら、私は、関谷透が、仮面鬱病にかかりやすい性格として、「律義で、几帳面で、1つのことに打ち込み、執着する。そして内攻的」などの項目を挙げたのを思い出していた。
関谷は、「こうした人間は、ときとして爆発することがある。大人版の家庭内暴力、校内暴力です」ともいった。

(「週刊文春」昭和59年4月5日号、セックス・ウォーズ、第5回)

 この男性が情緒障害の1変種であることは疑いようがないと思える。彼の成育環境を調査すれば、過保護(過干渉)が継続的に存在していたことが分かるはずだ。そして、過労と(自分の仕事を無視されたことに対する)心理的苛立ちが引き金となって「爆発」の1歩手前にまで行ったのである。
彼は表面的にはごく普通のサラリーマンとして生活しているし、ストレスの多いソフトウエア業界ではちょっとした奇行や奇癖は日常茶飯事だともいう。
しかし、こんな状態の人間がこの先10年、20年、と平穏に暮して行けるものだろうか。私には、彼がいずれアルコール中毒や覚醒剤中毒に陥ったり、自殺や衝動殺人をしでかすであろうことが自明のように思えてならない。
こういう人間が何10万人、あるいは何100万人といるのが日本の若年層の実状である。


 ――飽食時代のセックスを捉えるために、膨大な数のセックス・カウンセリングを行ってきた奈良林祥(主婦会館クリニック所長)を訪ねると、特に若い、それも官僚やビジネスエリートたちの間に容易ならぬ、"病気"が予想外に広く深く蔓延していることがわかった。

 「結婚しても性行為ができない。ようするに勃起しない。あるいは勃起はするのだげれど射精できない。それから最近増えてきたのだけれども、結婚しても、妻にまともに触れないという男が意外に多い。セックスというのは、男の方からすれば、要するに女を犯すことなんだけど、それができないのですね」

  奈良林の話では、こうした患者たちのほとんどが「偏差値の高い大学を卒業した若きエリートたち」で、なかでも、とくに「1流大学の理工科出身者が多い」そうだ。

 「こういう連中の母親達は例外なく、いわゆる教育ママで、息子たちに何から何まで世話をやき、結婚するとなると謝国権氏などの本まで買い与えて、よくお勉強しなさいよ、と念を押す。こういう母親の息子たちに限ってダメなんですよ」

 ”ダメ”とは、具体的にどんなふうに”ダメ”なのか。

 「身体健全な青年たちですからね。どんなふうに”ダメ”なのかと、夫婦を呼んで正常位をとらせてみると、たとえば、腕立てふせみたいな格好で両腕を突っぱっている。体はカチンカチン……。リラックスして女房の上に重なることができないのですよ。マザコンで、女を組みしくなんてとてもできないということなのでしょうな。

 そこで、乳房をこうして、腰をこうして、と愛撫の方法を教えて帰らせると、数日たって奥さんの方から電話がかかってくる。『先生、いろいろ教えていただきましたが、すみませんが、夫にやめるように指示してくれませんか』『なぜか』と聞くと、『先生にいわれたことをそのまま、胸を3回、はい、次に腰と、感情も流れもなく、まるでレッスン1、レッスン2、といったふうにされると、私の方がシラケてしまって』と。こういう男たちは完全な予備校後遺症だ」

 奈良林は吐き捨てるようにいった。

 その後、実際に若いエリート官僚やビジネスマンたちを面接取材すると、奈良林の話がいささかも大仰ではなく、それどころか"飽食時代のセックス"は彼の指摘以上に容易ならぬ事態にたち至っているらしいことがわかってきた。


〔ケース・8〕 32歳 独身女性 現在大手出版社でアルバイト

 明るくて、いかにも良家の娘といったすなおな女性。彼女は横浜の老舗の洋品店の長女で、名門女子大を卒業してテレビ局に勤めた後、30歳のときに大手繊維会社の社長の息子と結婚したが1年2カ月で離婚している。

 ――(中略)(2人の男性と奔放な、しかし本人にとってはひたむきな性関係の後、大手繊維会社杜長の長男と見合結婚に至った旨が書かれている)――

 結婚式は、ホテルで約400人の客を招待して豪華に行なわれた。新郎32歳、新婦30歳。両者とも初婚だった。新婚旅行はハワイで10日間の日程だった。

 ――新婚旅行での初夜はどうだった?

 「全然ダメでした。実は私たち、結婚したその夜はホテルに泊まったのですが、そのときも彼、何もできなくて……。もちろん結婚前にも何もなしでした。しかし、そんなことよりも……」

 ――何があったのです?

 私が問うと彼女は顔をしかめて笑ってみせた。

 「新婚旅行のハワイでの第1夜に、彼、すごく寝言をいったのです。その寝言、何だったと思います?

 『お母さん、お母さん……』

 あれ、本当に寝言だったのかどうか、私わからないのだけど、それ、聞いたときに、思わず、ゾーッとなって、なんて人と結婚したんだろう、と。だって気持が悪いでしょう。32歳の男がそんなこというなんて……」

 彼女の話によると、彼の気味悪い寝言はその後もしぱしぱくり返されたそうだが、肝心のセックスの方も勃起が不完全で、どうしても射精に至らなかったようだ。
 (中略)

 「彼、どうやら私との寝室でのこと、ことこまかに全部自分の母親に話していたらしいのです。
私たち、杉並の4LDKのマンションに夫婦だけですんでいたのですが、何かあった翌日には、すぐに母親がやってきて、だかんだとネチネチ私を責めるのです。
『あなたは息子に冷たい』とか『協力的でない』とか。それがだんだんひどくなって『下手だ』とか『品がない』なんてことまでいうのですよ。夜中の1時、2時まで……。
しかもその時、彼はいっしょにいて、母親の話すのに1つ1つ大きく肯いたりして……。それが1週間に2回も3回もなんです。
母親ったら、夜の彼とのやりとりをじつに詳細に、それも向う流にねじまげて知っていて、『息子があなたのオッパイにさわろうとしたら、あなたは邪険に払いのけたそうじゃないの』とか、もっとひどい、とても口にできないことをいって責めるんですよ。私、気味悪くなっちゃって……」

 妻とのセックスの不首尾の一部始終を母親に報告し、何とかしてくれと頼む32歳の息子と、そのたびに若い夫婦の新居に乗り込んできて、まるで息子をいじめたかのように妻をなじる母親……。

 「さすがに私の母もおかしいと感じて、彼の母親に『そちら様に性生活のことでちょっと何か問題があるのではないですか』といったら、彼の母親ったら、『いえ、そんなことは絶対にありません。新婚旅行に出掛けるときにも、ちゃんと、そういうことを書いた本も買って与えてありますから』ですって……」

(前出、第8回)


 何ともおぞましい限りであるが、その気になって探してみると似たような話は至る所にころがっていて、薄気味悪さを感ぜずにはいられなくなる。女性雑誌の投書欄に掲載されている左記のような話題を見聞きされた読者も多いはずである。


 マザコンで有名な同僚のYくんが、大学時代の友人の妹さんを紹介してもらったとかで、「今度の日曜日、デートなんだ」とルンルンしてるのです。うんうん、やっとYくんも母親離れか、と私はひそかに喜んでおりました。

 月曜日。晴れやかに出勤した彼に、「Yくん、きのうどうだった?」と、聞いたら、
 「うん、房総の方にドライブして、イチゴ狩りに行ったんだ。カメラ持ってたから、写真できたら見せるよ」

 それから3日後。写真を見せてもらうと、なんとYくんの母親がいっしょに写ってるの!!「ママが、イチゴ畑なんかいいんじゃない?っていって案内してくれたんだよ」だって………。

〔東京都/みゆき 23歳 会社員〕(「コスモポリタン」第9号、1983年9月、集英杜)


 私、中学校の教師をしてるんだげど、同僚のY先生を見てると、こんな教師に教わる子どもたちの将来が心配になっちゃうのよねー。

 このあいだ、Y先生がちょっとミスしたのをあやまらなかったので、生徒にすごくせめられたの。そうしたら、次の日から1週間も学校休んじゃって……。
ちょっとイヤなことがあるとすぐ休んじゃうのね。で、1日休むと次の日も……とずるずる長期欠勤。あんたには責任感ってもんがないのっ!?

〔京都府/美子 23歳 中学校教師〕(同)


 薬剤師をやっている可奈子ちゃんの彼、どう考えても異常なの。可奈子ちゃんと彼、予備校時代からの交際で、もう婚約してしまっているんだけど、何とか彼女を思いとどまらせる方法はないんでしょうか?

 可奈子ちゃんが彼の家へ泊まりに行ったりするでしょ。そんなに小さな家でもないのに、彼と彼の両親は1つの部屋で川の字になって寝ているんですって。彼に聞くと、それは彼が生まれた時から続いている習慣なんだとか。
彼の誕生後、夜の夫婦生活も1度もないのが自慢の夫婦なんですって。

 どこが自慢になるのか、私にはさっぱりわからない。

 今は彼、東京に上京しているんだけど、週に1回は両親がやってきて、彼の部屋を掃除して帰るのです。
 (中略)

 私たち友人一同は、彼がいかに異常かということを教えているんだけど、何しろ彼女は、ずっと女子校育ちの女子大出。おまけに彼がヤキモチを焼くもんだから、男の人との付き合いはまったくナシ。もともと世間知らずなところもあって、彼の言いなりになってるの。

 しかし、さすがに、彼の新婚旅行のプランを聞いたときは、彼女、考え込んでいたわ。
彼、自分の両親も一緒に、4人で新婚旅行に行くつもりなんですって。彼の両親も大層乗り気で、「みんなでハワイでマージャンをしよう」と張り切っているとか。

 ああ恐ろしい。可奈子よ、早く目をさましなさい!

〔愛知県名古屋市/久枝 25歳 会社員〕(同)