「ういんど」第18号(その2)
2001年7月1日発行
「生きている」実感
長野県 Y(16歳)
(中3の時、非行・夜間徘徊で入校)
僕にとっての「喜び」は、今、ここに居ること。生きていることです。「産んでくれてありがとう」という思いです。
スクールに入る前は、こんなことは考えませんでした。ただただ、その場のことしか頭になくて。何となく皆でカツアゲをやったり賽銭泥棒をやったり…。遊ぶためのお金が欲しかったこともありますが、何より、流されていたという感じです。悪いとは分かっていたんですが、誘われると「嫌」と言えませんでした。やっぱり意志が弱かったんだと思います。両親の気持ちも分かっていたつもりですが、正直言って周りの事はどうでも良く、自分さえ良ければいいと思っていました。
スクールを卒業して一番変わったのは、「嫌」と言えるようになったことです。今でも当時の仲間と会うし、「族にならないか」なんて誘われたりもします。でも、もう流されません。何ていうのか、つるんで悪い事をやっても、何の意味もないことが分かりましたから。当時は楽しかったんですが、今思えば「バカ」でした。
一生続けられる仕事がしたい
僕は将来、「電気関係の仕事」に就くつもりです。その為に、今ボイラー技師の資格を取ろうとしています。なぜ、電気の仕事がいいかと言うと、電気は一生必要だから。つまり、この仕事はなくならないからです。どうせやるなら一生続けられる仕事を、より早く始めたいんです。
最初は高校受験の予定でしたが、どうせ高校に行ってもダラダラと3年間過ごしてしまうはず。それよりは、その分の時間とお金を将来のために使いたいと思いました。
僕にとっての戸塚ヨットスクールは、ウインドサーフィンに出会え、いい友達に出会え、校長先生みたいな偉大な人に出会えた所です。スクールがもっと認められれば、僕もスクール卒業生として鼻が高いです。もっと生徒が増えて、全国にスクールができればいいし、少年院みたいな意味のないものもやめて、戸塚にしてしまえばいいのにと思います。少年院を出ても何も残りませんが、スクールを卒業したらウインドサーフィンが残ります。ウインドを続けるため、僕は今、東京での就職を考えています。
戸塚ヨットばんざい!
漫画家 さかもと 未明
元不登校児で神経科に10年通院――こんな過去ある私が戸塚ヨットスクールに体験入校して思ったのは、「もっと早く出会っていれば、たのしー青春送れたのによー」ってこと。
最初は「何でこんなことしなくちゃいけないの?かったるい!」とムカツキながらやったウインドサーフィンだけど、ハマるとたのしーんですね。悔しいかな久しぶりに"必死"になりました (^_^)
結局、人間変な理屈ばっか考えないで、もっと自然と語り合わなきゃダメだと思い知りました。そうすれば気持ちもすっきりするし、本来の能力だって呼び覚まされるんじゃないかな。精神分析は子供を救わないと、体験的に思います。
早く戸塚ヨットに巡り会えた子供はぜったいラッキー。私なんか「手遅れ」だそうです(笑)。でもそれでマンガ家になれたからいっか。子供がくじけたらまずは戸塚ヨットへ!それでどーしてもダメならマンガ家か芸人修行ですね。
「強くならなければ死ぬしかない」という世界の真実が、人間を健全にするんじゃないかと思うよ (^_^)
本当の試練は卒業してから
コーチ 山口 孝道
毎年毎年、卒業生を見送る度に思うこと――それは、「おめでとう」でも、「良かった」でもありません。「これから大丈夫だろうか。もとの庭に帰って、うまくやっていけるだろうか」そんな不安の方がよほど大きいものです。
これが普通の学校なら、「卒業、おめでとう」でいいのかもしれません。しかし、ヨットスクールは違います。
我々は、生徒が本当にダメな時からその成長につき合います。生徒は自分の一番醜い部分、人に見られたくない部分を我々の前にさらけ出します。そこからが訓練のスタートなのです。そして我々は、その醜い生徒が少しずつ変わっていく姿を、すぐそばで見続けることになります。それだけに、生徒のコーチに対する思いも複雑だと思います。単純に、「おかげで卒業できました」とはいかないでしょう。
ほめるのは楽だが…
入校の際、ウインドサーフィンの経験のある生徒はほとんどいません。我々は全くの初心者を相手に、ほぼ丸一年かけて指導していきます。その間、生徒はどんどん成長し、顔つきも見違えるほど変わります。そんな時はとてもうれしく、できればこのままずっと成長を見続けたいと思うこともあります。もっと伸ばしたい、もう少しスクールにいさせればどれほどの者になるだろう…。しかし、それはできません。
我々の目的は、彼らを選手にすることではありません。ウインドは人間性を育てる手段にすぎません。人間性の土台ができれば、次は社会に出して社会性を身に付けさせなければなりません。いつまでもそばに置いておくことはできないのです。それだけに、卒業してからの彼らの方がよほど気になります。スクールではうまく生活できても、いざ社会に出るとまた挫折してしまう生徒がいるのも事実だからです。
スクールの日々は、我々コーチにとっても葛藤の日々です。叱るという行為には、褒めるよりずっとエネルギーがいります。誰だって人に嫌われたくはありません。我々だって生徒から「いい人」と思われたい。でも、それでは彼らを伸ばすことはできません。どんなに嫌われようとも、叱ってこそ彼らは伸びるのです。
そして、彼らが卒業し、5年経ち、10年経って、「○○に勤めています」「結婚しました」…という"普通の暮らしぶり"を耳にした時。その時初めて、我々は「良かった」と思うのです。
ずっと注目していた「脳幹論」
東京都 杉本 守男
戸塚先生が「朝まで生テレビ」に出演された際(10年ぐらい前)、また「イレブンPM」に宅八郎と出演した際にも関心を持って見ていました。
「非行は要するに脳の病である」、と先生はおっしゃっています。そのような説明をされたのは先生が最も早かったのではないでしょうか?しかも、「負荷を与え、それを乗り越えさせる」と、その治療まで実践されているのですから、非常に説得力があると思います。
先生の御著書「敵は脳幹にあり」を、どうしても読みたくて、古本屋等を探しましたが見つかりません。それが、最近になってホームページを発見し、そこに書籍案内があったので、メールしました。
少年犯罪については数十年問題視されながら、今までのところ「唯一まともな理論と実践を展開しているのは戸塚先生だけではないのか」という印象があります。というのも通常それらが「脳の病」として認知されていないためなのでしょう。
これは勝手な印象かも知れませんが、1960年以降に生まれた者に多いということはないでしょうか(私もその年代に入っていますが)。例えば95年、オーム真理教事件の信者たちの中心は、60年代前半の人間であったように思われます。
戸塚先生には是非、最新の本を執筆して頂きたいと期待しております。また、(病人が増えているようにしか思えないため)ヨットだけではなく何かそれの代替にもなるような治療法も考えて頂きたい、と期待しております。
誰も明確な処方箋を描けない以上、戸塚先生のやられていることに注目せざるをえないと思います。
これからもご活躍を期待しています。(電子メール)
○ 編 集 後 記 ○
▼「脱走」の連絡をすると、親は皆パニックになります。それを、「家に入れてはダメ。話を聞いてもダメ」と説得するのが私の役目です。心の中では「そんな簡単にはできないだろうな」と思います。でも必死に説得します。なぜなら、卒業した子供達と親の笑顔を覚えているから。今、目の前にいる親にもいつか笑ってもらいたいと思うからです。
▼悩みを持つ家庭を知れば知るほど、いい家庭、理想の家庭が見えてきます。そして今までは何とも思わなかった、自分が育った家庭に感謝の念が湧いてきます。困っている親の話を受け止めるのはつらいですが、日々、学ぶことと気付くことの多いこの仕事をしていてよかったです。
▼前号からカラーになりました。テイケイ鰍フ高花会長、ありがとうございました。
(眞美)

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