「ういんど」第5号

1992年1月15日発行




正義を行動で示した被告達

卑劣な妨害に毅然と耐えて9年

弁護士  山本 秀師

 戸塚ヨットスクール潰しのきっかけとなった「暴走族事件」発生から8年8か月が経過。公判回数は本件だけでも136回、加藤・小杉両被告人に対する分離公判も加えるならば実に170回を越えます。
 しかもこの間、代用監獄への留置、弁護人に対する接見妨害、被告人同士や被告人と弁護人の間の分断工作、スクールと弁護人に対する誹謗中傷、弁護側証人・後援会員らに対するいやがらせなど、ありとあらゆる卑劣な妨害が執拗に繰り返されました。
 また、戸塚校長とコーチらに対する不当な身柄拘束は、
  可児被告人……3年2か月
  戸塚被告人……3年1か月
  山口被告人……3年1か月
  横田被告人……3年1か月
  東 被告人……2年10か月
  内田被告人……2年7か月
  藤浦被告人……2年7か月
  境野被告人……1年8か月
と、まさに異常としか言いようのないものでした。しかも、保釈後も被告達は居住・旅行の制限をされながら、一部の者は2〜3日間を費やして、月2回の公判廷に臨まねぱならなかったのです。
 被告達が、このような過酷な試練に耐えながら、検察の圧力に屈することなく、真摯な態度で出廷してきたのは、検・警察の適正手続きを無視したやりたい放題の違法行為と、真実からかけ離れた主張と立証に対する強い憤りがあったからにほかなりません。被告達が示したこうした行動こそ、本事件の公訴事実に対す何よりの反証、"行動証拠"であると考えるものであります。


強引極まるつじつま合わせ

 検察側は、「戸塚ヨットスクールは営利目的の常習的暴力集団であり、体罰と称して暴行を加えることを指導方針としていた」(冒頭陳述書)と主張しています。そして、この奇怪な見解を押し通すために「暴力的行為を伴う訓練を一体となって遂行し、利益を享受することで合意していたのだから、戸塚ヨットスクールという組織に属した時点で、コーチ達には監禁・暴行の共謀が成立していた」と、とてつもない論理を展開してきました。
 こうした非常識極まる論理と、より一層非常識極まる司法権の乱用、そして煽情的なマスコミ報道とにより、本件はデッチ上げられていったと言って過言でありません。
 例えば、戸塚ヨットスクールのコーチが次々と逮捕された昭和58年9月、ただ1人残ってスクールを守っていた境野コーチは、3年前に起き、その時点で既に取調べが終了していた死亡事故を容疑として逮捕されました。これなど、スクール潰しのみを目的とした、ヒステリックな捜査権の乱用の典型です。
 あるいは、奄美大島への旅行の際、2名の訓練生が連絡船から行方不明になった事件では、検察側は、「監禁致死」なる罪名の書かれた検面調書など存在しないのに監禁致死で起訴するという、誠に無責任かつ投げやりな態度を見せています。


歴史の汚点とするな

 また、検察側の証言は、ほとんどが非行、家庭内暴力など重度の情緒障害児によるものであり、しかも調書作成時には大半が未成年であったという事実もあります。即ち、
15才(恐喝、シンナー、校内暴力)、20才(非行歴6件、補導歴4件)、15才(窃盗、シンナー)、16才(副番長、校内暴力、シンナーなど)、15才(シンナー、無免許運転、窃盗、恐喝、暴力団と交際など)、21才(覚醒剤、薬物中毒と精神病質で入院中に警察官に付き添われて出廷)、15才(シンナー、家庭内暴力、強姦など)、18才(殺人未遂)、19才(父親に対する保険金殺人未遂)、16才(殺人未遂、精神科に入院歴)、15才(家庭内暴力、シンナー、不純異性交遊、家出、万引きなど)
といった具合で、その証言能力には甚だ疑問のある者ばかりなのです。こうした証人達の言動がいかに信頼しがたいものであり、逆に、どんな都合のよい証言でも引き出せるかを、検察側は知悉しているのであります。
 このような証言の積み重ねの結果、生活を犠牲にして情緒障害児の更生に取り組んできた被告達がもしも断罪されるのであれば、我が国の司法制度の根幹に関わる汚点を歴史に残すことになるに違いありません。





『9.支援者の声』に掲載



○ 編 集 後 記 ○

▼先日、あるマスコミ関係者から誠実な手紙をもらいました。――「事件当時、戸塚ヨットは金目当ての暴力集団という捜査当局の主張をそのまま信じていたが、増え続ける登校拒否や、その後の社会の様子と合わせて考える時、"スクールの存在自体を否定するようなことが、したり顔のマスコミにできるのか"と考えるようになった」というものです。
 彼は、ヨットスクールの現状を紹介するリポートを作ろうとしたが、「刑事被告人に肩入れするようなことはできない」という上からの圧力でダメになったとも述べています。
 普段、"言論と報道の自由"を声高に主張するマスコミですが、その社内には、言論の自由がないようです。
 戸塚ヨットスクール問題の重要性について、すべての報道機関(毎日新聞系を除く)が真実の報道をしてくれる日を待ち望みたいと思います。

▼戸塚校長に懲役10年を求刑した検察側は、日本中の親達が知りたがっている"極秘の教育機関"について情報を入手しているという噂をご存知でしょうか。
 その教育機関に預ければ、子供が登校拒否や非行になっても、体罰もヨットも使わず、安い費用で理想の子供に立ち直らせてくれるらしいのです。そこでは、あらゆる自主性が尊重され、深い愛情と温かい思いやりに満ち溢れた理想の教育によって、どんな苦難にも負けない強い心と身体を持つ子供に育ててくれるのです。短期間に、タダ同然で!
 噂が本当なら、この極秘教育機関の情報を独り占めにすることなく、広く国民に知らしめ、公共の福祉に資する責任が、公僕である検察官にはあると思いますが、いかがなものでしょう。